
Press Release
2026.4.30 | Baden, Switzerland
※本リリースの日本語版は参考のためにご覧いただき、正式には英語版プレスリリースをご覧いただけますようお願い申し上げます。
Accelleron(アクセラロン)は、アジア太平洋地域の港湾が業界をまたぐ連携のもとで、グリーン水素由来の合成燃料(e-fuel)市場に向けた初期的な基盤を構築しつつある状況を明らかにしました。こうした動きは、脱炭素化の要請だけでなく、同地域全体で重視されている長期的なエネルギー安全保障への関心によっても後押しされています。
船舶の準備は整っていますが、燃料はまだ十分に供給されていません。メタノールやアンモニアでの運航が可能なデュアルフューエル船が次々と就航するなど、船舶技術は急速に進展しています。一方で、需要の分散、高額な初期投資、そして大規模なインフラ整備が必要となることから、燃料生産の立ち上がりは依然として緩やかです。
AccelleronのPresident of the Medium- and Low-Speed Divisionの Christoph Rofka氏 は、次のように述べています。
「合成燃料プロジェクトが前進しているケースでは、エネルギー分野と、複数の脱炭素化が困難な産業分野が一体となって動いています。需要を束ねることで、建設に踏み出せる規模の契約が可能となり、リスクが分散されることでプロジェクトの保険付保も現実的になります。また、インフラを重複して整備するのではなく、一度の整備で済ませることもできます。港湾は、まず内陸の発電や産業用途向けにバンカリングインフラを計画・整備することで、このプロセスの要となり、将来的な海運での導入に向けた道筋を整えることができます。」
Accelleronのレポート Asia Pacific as the proving ground for overcoming shipping’s carbon-neutral fuel deadlocks では、シンガポール、横浜、釜山、上海をはじめとする主要港湾において、グリーン水素や合成燃料に関する初期段階のプロジェクトが進展していることが示されています。これらの取り組みは、海運分野単独の需要によるものではなく、産業の脱炭素化やエネルギー安全保障の目標と連動した各国の水素・合成燃料戦略によって推進されています。
アジア太平洋地域全体で、港湾はアンモニアやメタノール関連のプロジェクトを進め、安全枠組みの整備、燃料取り扱い能力の強化、運用面での即応体制の構築を進めています。同時に、発電、化学、重工業といった陸上産業分野における業界横断的なオフテイク(引き取り)を通じて、水素や合成燃料の初期生産が進んでいます。こうした幅広い需要基盤により、将来的な海運での本格導入を待つことなく、燃料システムやインフラ、標準の整備が進められています。
本調査は、アジア太平洋地域において、合成燃料の初期市場の輪郭が浮かび上がりつつあることも示しています。港湾は、それぞれの資源条件、産業構造、地理的特性に応じて役割を分担し、生産拠点、中継拠点、受入拠点、輸出拠点として機能し始めています。こうした役割分担を通じて、水素や合成燃料に関する、動的な需給構造が形成されつつあります。
さらに、オーストラリア―シンガポール―中国を結ぶ鉄鉱石輸送回廊のような大規模貿易ルートは、産業需要(水素を用いた鉄鉱石処理)、海上交通、港湾の準備状況を結び付ける形で、合成燃料の早期導入に向けた現実的な経路として注目されています。本調査ではまた、シンガポール―ロッテルダム航路が、アジア太平洋地域で形成されつつある合成燃料システムと、欧州の需要拠点を結ぶ発展途上のリンクであることも示されています。
横浜港は、国の政策、自治体による調整、産業界との連携によって、官民連携・業界横断型アプローチがどのように実際の取り組みとして実現しているかを示す事例です。国土交通省が主導する「カーボンニュートラルポート(CNP)」を率先して進めるべく、横浜港は、周辺産業の需要および国のエネルギー戦略と整合した港湾の発展に取り組んでいます。
横浜港のロードマップには、燃料取り扱いシステムや、水素・アンモニア・メタノールのサプライチェーンに関する145件の官民連携プロジェクトが含まれています。さらに、陸上電力供給、荷役機器の電動化、資金調達の仕組みなどを含む、港湾エリア全体の脱炭素化に向けた包括的な取り組みも盛り込まれています。さらに、隣接する川崎市と緊密に連携し、地域産業全体でのエネルギー需給の将来像を検討しています。
横浜市港湾局 カーボンニュートラルポート推進担当課長の中村仁氏は、次のように述べています。
「国際海運・物流分野、そして発電、製鉄、化学といった重工業分野の脱炭素化を実現するため、国土交通省は、これらが集積する港湾エリア全体の脱炭素化を目指す『カーボンニュートラルポート』施策を立ち上げました。」 さらに次のように続けています。 「特に複数の分野にまたがる初期段階の取り組みにおいては、公的支援が不可欠です。横浜港CNPサステナブルファイナンス・フレームワークを通じて、企業がグリーンローンなどの資金調達を行いやすくなるなど、短期間で港湾の脱炭素化、燃料関連インフラ、サプライチェーンにまたがる145件のプロジェクトを計画に位置付けることができました。このように体系的に整理された官民連携・業界横断型のアプローチは、インフラ整備や市場形成を前に進めるうえで有効であることが確認されており、CNP施策の目標に向けても、非常に前向きな進展が見られています。」


Accelleronより発行されたレポート "Asia Pacific as the proving ground for overcoming shipping’s carbon neutral fuel deadlocks?"のエグゼクティブサマリー部分のみを抜粋した日本語版をこちらからダウンロードできます。 ぜひご覧ください。